TOP >> ;Archive: 15. 9月 2015

クラウド・エヌ

最近は、NTTコミュニケーションズの「クラウド・エヌ」というサービスをよく利用しています。3月ごろに、知り合いから紹介を受けて、たまたまその時に対応していた案件にフィットしたため、それ以来顧客に紹介したり、自社でもちょくちょく利用しています。

先週はセミナーにも参加し、なるほど、これは確かに楽チンだな、と更に思うようになりました。

「クラウド・エヌ」というのは、誤解を恐れずに分かりやすく言えばレンタルサーバーのクラウドサービスで、NTTCom社が運営するサービスの固有名詞です(と言ってもよくわからない!?)。実際にはレンタルサーバーだけにとどまらず、一般的にはIaaS(Infrastructure as a Service)と呼ばれるサービスで、インフラ全体をクラウドとして提供するサービスです。

皆さん、パソコンのCPUでデュアルコア、とか、4コア、というのは聞いたことがあると思います。例えば100コアくらいの巨大なPCがあったとして、それを複数人が、あたかも自分が占有しているような使い方で利用できるレンタルサーバーのサービスがイメージしやすいでしょうか。

わかりやすくするためにレンタルサーバーと言いましたが、単純にサーバーの時間貸しではなく、仮想データセンターサービスと言った方がよいかもしれません。

リアルな世界では、普通の企業がデータセンターを利用する場合は、データセンター事業者の建物フロアに横幅19インチのサーバーラックを1つとか複数配置して、そのラック内に自社で利用するインターネット回線を引き込み、ネットワーク機器やサーバーを設置します。ラックの中に何を設置しても基本自由です。自社のサテライトオフィスのようなものです。

よって、データセンターを利用するときは、回線手続きが必要で、機材の運搬も必要です。当然それらの設定も必要になります。これは大変骨の折れることです(私が嫌なのはケーブルの始末です)。また、最低限利用するには契約金を含めると人件費を除いても初期費用50万、月額でも7、8万は必要です。

これに対し、「クラウド・エヌ」を利用すると、非常に簡単に、リアルなデータセンター利用と同じことが机に座っていたままで出来てしまいます。

使い方は本当に簡単です。クラウド・エヌの申込みをしてIDを取得したら、そのIDが19インチラックの鍵だと思えばいいです。あとは、その中に仮想サーバーを設置できます。VPNのために仮想ルーターを設置できます。バックアップのための仮想ディスクも設置できます。あの煩わしい運搬やケーブリングをしなくても済みます。これは驚異的なことです。

更に嬉しいのはコストです。利用にかかるためのコストは人件費を除けば0円です。初期費用が50万円かかるのに対し、0円です。また、月額の利用料金も仮想のリソースを稼働させている時間だけ課金されるので、不要な時はサーバーを停止させておけば料金が発生しません。

ただし、本格的にフルタイムで利用したり、仮想サーバーの数が増えると、費用は通常のレンタルサーバーと変わらないか、リアルなデータセンターの集積度を上げればその方が安いかもしれません。

同種のサービスではAmazon EC2がパイオニアです。その他、国内ではGMOクラウドや、最近ではNiftyクラウドも登場しました。クラウド・エヌ以外のサービスは詳しくは知らないのですが、このクラウド・エヌのすごいところは、サーバー周辺のネットワーク、DNSやディスクなどのサービスが充実していることです。事業運営に必要なITリソースはすべてあるという感じです。

更に興味深いのは、どのサービスも仮想マシンを操作するGUIは同じように思えます。勉強不足で知らないのですが、仮想マシンを運用する共通のプラットフォームがあるということかもしれません。それは何なのか。もしかしたらそれはAmazonのソフトウェアなのかもしれない。とすると、それさえも売り物にしてしまうAmazonという企業は空恐ろしい感じがします。

話は戻りますが、「クラウド・エヌ」では自分でOSイメージをアップロードすることができますので、Windows XPやWindows7も利用することができます。ベンダーに依らないので、ベンダーロックだ、と言っています。

15年くらい前にWindowsのリモートデスクトップが登場した当時、すべてのPCを仮想化して、ということが話題となりました。使う側はシンクライアントです。当時のサーバー技術はブレードサーバーなどでハードウェアの集積化でした。今もそれは同じかもしれませんが、ハードウェアは完全に表に出なくなりました。

ここで今日のタイトルです。「デスクトップPCが無くなる」日が本当に来るかもしれません。ほとんどのデスクトップPCはクラウドということも現実的になったと思います。

さて、この便利な「クラウド・エヌ」の使い方も重要です。これらのサービスを使う目的は何でしょうか?思いつくもので以下の3つです。

①障害に強いシステムの構築
②自由度が高くスピーディーな環境の構築
③上記の低コストでの実現

①は事業が大きくなればなるほど最重要ですが、小規模企業や個人事業レベルでは②、③が重要です。本当に個人レベルでも大企業レベルのインフラが利用できるようになりました。

ここで重要なのは、何か事業をしていないと全く活用する機会がないということです。例えば派遣に出ているエンジニアが、就業時間外に自己負担でこのようなサービスを利用して学習したり仕事の問題解決にあたったりという活用ができます。(もちろんデータの持ち出しはダメです!)これは個人レベルであっても既に事業の一部と言えると思います。その延長が起業です。

所属会社や大きな組織に依らずに今まで出来なかったことができるようになります。逆に言うと、できなかった理由がなくなっていくということなので、言い訳ができなくなってくるということです。やる者とやらない者の差は今まで以上に大きくなるのかなという気がします。

当社もデータセンターはいくつか契約していますが、1年くらいかけてIaaSに移行をしていきます。しかし、そうなると5月に一度はやめようと思った台湾の小さいデータセンターはコストも小さく台湾に行く理由にもなるので、そのまま継続した方がいいかもしれません(こういうのを付加価値というのだろうか)。

一方、当社で手掛けているデジタルサイネージ事業はまだまだハードウェアを使う事業なので、流れに反してはいますがその分参入が難しく、エンジニアとしても面白味があります。やっぱり自動車レースが全部ゲームセンターになったら面白くないです。とにかく特色ある事業を展開したいものです。

※本記事はメールマガジン『インスクエア ビジネスニュース』に寄稿しました。


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